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大腸がん治療編

大腸がん治療編

大腸がんだと言われました。セカンドオピニオンを主張してもいいのでしょうか?

診断と治療に関する意見を、担当医以外の医師に求めるセカンドオピニオンは患者の権利です。ただ、それには診療のための情報を幅広く知るためという目的があります。まずは、担当医の見解を十分に聞き、別の医師の意見を担当医に正確に伝え、ともに今後の治療方針を考えていくという姿勢が前提になると思われます。なんでもかんでもセカンドオピニオンというわけではなく、担当医の説明に疑問がある場合、質問をしても十分納得がいかない時に、セカンドオピニオンか必要かと考えます。

すぐに治療しないといけないのでしょうか?

大腸がんは、他のがんに比べて悪性度が低く、切除などの治療も行いやすいため治しやすいがんと言われています。ところが、国内で年間にがんで亡くなる方の数をみると、すべてのがんの中で男性では第3位、女性では第1位となっています。検診率の低さがその大きな理由と思われます。速やかな治療が重要ですが、数週間や数ヶ月で急に進行することはまずありませんのであまり焦る必要はありません。

大腸がんにも種類があるのでしょうか?

大腸がんは腸壁の最も内側にある粘膜に生じ、長い大腸のどの場所でも起こり得ます。日本人では肛門に近いS状結腸と直腸に発がんする例が多く、両者で大腸がん全体の半分以上を占めていますが、最近は右半結腸(奥のほう)にできる癌の割合も増えてきています。
発生の仕方には、良性のポリープががん化するものと、粘膜上に直接がんが生じるもの(デノボ癌)、潰瘍性大腸炎などから癌化する(炎症発がん)と大きく3 つの種類があるとされています。また最近はSerrated pathwayといってSSA/Pといった鋸歯(きょし)状病変(過形成性ポリープの一種)からの癌化ルートもあることがわかってきました。解明されていない点も多いですが、 右半結腸に1cmを超えるような鋸歯状病変がある方は、注意が必要です。

どんな治療方法があるのでしょうか?

大腸がんの治療法は、さまざまな局面に対応できるよう進歩しています。具体的には、ステージの軽い順に、ごく初期の癌であれば、内視鏡を用いてがんを切り取る内視鏡治療、粘膜下層への浸潤が診断される場合は、お腹に開けた小さな穴から器具を入れて行う腹腔鏡下手術、さらに深くなると、お腹を開いてがんとその周囲の腸管などを切除する開腹手術、また多臓器に転移が疑われる場合は、抗がん剤を用いた薬物治療や放射線でがん細胞を死滅させる放射線治療となります。

人によって受けられる治療と受けられない治療があるのでしょうか?

治療法はがんがどこまで進行しているかという病期によって決まります。がんが粘膜にとどまっている段階ならば内視鏡治療が、それ以上の層まで達している、あるいはリンパ節への転移が認められる段階ならば手術治療が、他の臓器への転移が明らかな段階ならば手術のほかに薬物治療や放射線治療がそれぞれ行われています。

治療方法は患者が選べるのでしょうか?

患者さんにしてみれば、できるだけ簡便な方法をと願うのはもっともな思いでしょう。しかし、がんの病期によっては方法が限られてくるのが事実ですし、医師の側に高い技術が求められ誰で もすぐに行えるわけではない治療法もあります。医師の説明をしっかりと聞き、十分な相談のもとに適切な選択をするのが重要です。またESDや腹腔鏡手術など高度な技術を要する治療法では、病院や医師によって得意・不得意がある場合もありますので、担当医に相談することも必要です。

手術をするのはどういうときでしょうか?

病期でいえば、がんが大腸壁の粘膜下層の深くから筋肉層に達している、あるいはそれ以上にまで及んでいる例、さらにがんの深さに関係なく腸の外にあるリンパ節に転移している例が手術の適応となります。がんができている部分だけでなく、リンパ節などにがんが転移している可能性があるため、その前後の腸管を含めて切除します。

内視鏡でできる手術について教えてください。

大腸内視鏡の先端から器具を出してがんを切除する方法です。病変がポリープ様ならば金属製の輪をかけて電流で焼き切り、平坦ならばその下に生理食塩水を注入して持ち上げて同様に焼き切ります。がんが粘膜内あるいは粘膜下層浅くにとどまっていること、さらに1回で採りきれる大きさであることが実施の条件になります。以前はスネアの大きさの制限から2cm程度までが限 界でしたが、ESDといって電気メスで癌をくり抜く方法が開発され2cm以上でも癌が粘膜内に留まっていれば、内視鏡で治療できる時代となっています。

腹腔鏡と開腹手術のメリット・デメリットを教えてください。

腹腔鏡下手術は、お腹に開けた数か所の小さな穴からカメラ(腹腔鏡)と手術器具を入れて、開腹手術と同じ処置を行います。傷が小さいことから術後、腸閉塞などの合併症が起こりにくい、回復が速いなどの利点があります。一方、開腹手術は腹腔鏡下手術に比べて患部を目や手で確認できるほか複雑な手技が可能で、手術時間も短くできます。それぞれに長所・短所がありますが、基本的には病期や病変の場所によって推奨される治療法は決まってきます。また外科医・病院に よっては得意・不得意といったこともありますので、主治医としっかり相談下さい。

手術のときにリンパ節をとることがあると聞いたことがあります。 とっても大丈夫なのでしょうか?

大腸がんの手術では、腸管をある程度長めに切除するとともに、腸の外部にあってがんが転移する可能性があるリンパ節を取り除く(リンパ節郭清)ことが基本です。そうすることで、再発の危険性を低下させることが目的です。他のがんの手術ではリンパ節をとると浮腫などを起こすことがありますが大腸がん手術ではみられず、切除したリンパ節の数が多いほど再発や転移が少ないこともわかっています。

手術の前にはどんな検査をするのでしょうか?

大腸内視鏡検査でがんが診断される、あるいは採取した組織ががんであった場合、注腸造影検査やCTコロノグラフィーでがんの正確な位置と腸管への深まりぐあいを調べ、腫瘍マーカー検査や腹部CTなどの画像検査で転移の有無を確認します。こうした検査を通じてがんの病期を知ることができ、患者さんにとって最も望ましい治療方針の決定へとつながります。

手術は何時間くらいかかるのでしょうか?

手術時間は、がんができている場所や病期によって異なりますが、開腹手術て2~3時間というのが一般的です。腹腔鏡下手術ではもう少し幅があり、なかでも直腸のがんを手術する場合には やや長くなる傾向があります。

治療方法はドクターによって異なるのでしょうか?

大腸がんの治療は、医師によってというよりも病期や部位によって決まるのが基本です。ただ、たとえばESDや腹腔鏡下手術などは難易度が高く、医師の経験や技術を考慮して行われなけれはなりません。また、抗がん剤を用いた治療なども、医師の日々の研鑽や、抗がん剤の開発によって新たな手法が生まれやすい領域といえます。

抗がん剤治療はどういう副作用がありますか?

大腸がんの抗がん剤治療は、手術治療と組み合わせたり、再発がんや進行がんで手術が困難な 例に単独で行われたりします。副作用には、痺れ、下痢、吐き気、嘔吐、脱毛、貧血などのほか、手足の指や爪に皮膚障害がみられることがあります。最近は、こうした症状への対処法も進歩してきており、患者利益の追求が目指されています。副作用症状をいかに少なくするかが医者の腕 の見せ所ですので、副作用を我慢するのではなく、しっかり主治医に相談下さい。

手術をするときの費用や入院期間を教えてください。

手術の費用は、自己負担の上限を決めそれを超える分を税金で賄う高額療養制度を用いると、一般的な所得で健康保険3割負担の方ならは10万円程度です。入院期間は、施設によって異なります。腹腔鏡下手術で1~2週間、開腹手術ではその倍くらいが目安で、最近はその期間が短くなる傾向にあります。

後遺症や合併症はあるのでしょうか?

大腸がんの術後に起こる症状としては、一般に下痢、ガスが出にくい、便秘などがみられることがあります。直腸がんの手術では、近くにある排便や排尿、性機能などに関係する神経が傷つく可能性があり、術後にこうした機能に障害が残る場合があるほか、肛門近くにがんがある場合には人工肛門を造ることもあります。事前に主治医の外科の先生に詳しく説明してもらいましょう。

人工肛門をつけるのはどういうときですか?

直腸がんの手術は、患部が肛門からある程度離れていれば肛門の機能を維持する方法がとられ ますが、肛門に極めて近い例では機能を残さない方法も行われ、その場合には便の排出口として 人工肛門(ストーマ)を設置します。もっとも、手術技術は進歩していてこの処置を回避できる 例も増えてきています。また一次的にストーマを設置し、後から、閉鎖する場合もあります。また患者さんの状態によっては人工肛門を増設したほうが、術後の生活の質(QOL)が保たれる場合もありますので術前に十分に主治医と相談することが重要です。 例として、人工肛門は回避できたものの、1日に何回もトイレに行かなくてはならないといった症状が出ることがあり、人工肛門を増設したほうが良いこともあります。

治療の途中で病院を変えることはできますか?

患者さんが治療に疑問を感じることは少なくありませんし、より効果的な治療をという思いは当然です。大腸がんにはさまざまな治療法がありますが一つひとつは病期に応じていて、その進め方も一様ではありません。治療中に転院を考える場合には、ご家族や周囲の方ともよく相談してください。

手術の代替治療で大腸がんに効果が高いのはどういう方法でしょうか?

他臓器への転移が明らかな場合には、抗がん剤などの治療が選択されます。近年、がん治療に対する補完代替療法への関心が高まっていて、大腸がん領域では、乳酸菌などのプロバイオティクスに抗がん剤治療時の下痢の軽減効果が知られています。ただ、明らかな科学的根拠が得られている療法はまだ存在しないのが現状です。